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11話 無防備な姿と、崩れゆく理性

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-08-27 22:42:31

 やっぱりダメだ。ユウマくんが、わたしからたった数十センチ離れるだけで、胸がギュッとなるくらい悲しい気持ちになってしまう。とてもじゃないけど、今は、まだこの思いを伝えることなんてできそうにない。

「ふふっ。ユウマくん、照れてるぅー? 仲の良い友達なら、これくらいあたりまえだよねっ」

 わたしにとっては、これじゃ足りないくらいなんだけど。ユウマくんは、顔を真っ赤にして目を逸らしたけど、ニコッと笑ってくれた。喜んでくれてるのかな?

「そ、そうなんだ? 俺と仲良くしてくれてありがとな……」

「えへへ。うん。わたしも……ありがとね! ……本当に」

 わたしの言葉に、ユウマくんは少しだけ間を置いた。そして、探るような、どこか戸惑ったような声で尋ねてきた。

「……他の仲の良い男子にも……してるの?」

 その問いかけに、思わず「え? は?」と間抜けな声が出た。何言ってるんだろう。ユウマくん以外に、こんな風に触れる男子なんていないのに。

「してない! さっきも言ったじゃん。仲の良い男子は……ユウマくんだけ! 二人っきりにならないしぃ……近寄らないもんっ。えへへ」

 そう言って笑うと、ユウマくんは何も言わずに、ただ真っ赤な顔をして、また目を逸らした。でも、その表情は、どこか嬉しそうに見えた。よかった、これで、まだしばらくはユウマくんのそばにいられる。そう思うと、胸の奥がじんわりと温かくなった。

・♢・♢・♢

 お風呂から出て、床に置いていた服に手を伸ばした。シャツに袖を通そうと背中を向けたその瞬間、ヒナの気配がぴたりと止まったのを感じた。さっきまで聞こえていた、そわそわとした微かな物音も消え、部屋の空気が一気に張り詰める。

 何事もなかったかのようにシャツを着終え、ゆっくりと振り返る。すると、ソファに座るヒナは、まるで何か恐ろしいものでも見たかのように、呼吸を止めて固まっていた。その視線は俺の胸元に向けられていたが、俺が振り返った途端、反射的にサッと逸らされ、ソファのクッションをぎゅっと抱きしめた。その顔は、さっきまで俺の裸を見て赤くなっていたのとは違う、血の気が引いたような青白さを帯びていた。

 どうしたんだろう? 俺の胸の傷跡を見てしまったのか? でも、あいつはそんなことで動じるような奴じゃないはずだ。

「お、お着替え、終わった?」

 ヒナが絞り出した声は、普段の明るさとはかけ離れて、明らかに上ずっていた。その震えを悟られないように、努めて明るく振る舞おうとしているのが痛いほど伝わってくる。俺が不思議そうな顔で見つめると、ヒナは視線を泳がせ、無理に笑顔を貼り付けた。その表情は、まるで初めて俺の部屋に来た時のような、ぎこちなさがあった。

 心臓がうるさいほど鳴り響いているのが、俺にまで聞こえてくるような気がした。ヒナの顔は熱を持ち、その瞳の奥には、喜びとも困惑ともつかない、複雑な感情が揺らめいているように見えた。

「ね、ねぇ、喉乾かない?何か飲む?わたし、ユウマの冷蔵庫、勝手に開けちゃおっかなー?」

 ぎこちない笑顔を貼り付け、強引に話題を変えようとするヒナ。普段なら迷わず開けるはずの冷蔵庫に、手を伸ばすことさえ躊躇っているのが分かった。まるで初めて俺の部屋に来た時のように、手足の置き場に困っている。その不自然な行動に、俺はますます困惑した。一体、何がヒナをこんなにも動揺させているのだろう。

「うん、いいよ」

 俺は何も知らないまま、いつものように優しい笑顔で答えた。その言葉を聞いたヒナは、どこか安堵したように見えた。その優しい声が、今のヒナには、今までとは違う響きを持って聞こえているのだろうか。俺には、その理由が全く分からなかった。

 二人で並んで風呂上がりの麦茶を飲んでいた。冷たいグラスの結露が、指先にひんやりと心地よい。リビングの照明が柔らかく俺たちを包み、さっきまでの緊張感が少しずつ和らいでいくのを感じていた。ヒナは麦茶を一口飲むと、満足そうに小さく息を吐いた。

「うん。よし! いつものわたし復活っ」

 ヒナが突然、いつもの調子に戻ったかのように、両手を突き出してそう宣言した。その唐突さに、俺は思わず一歩後ずさる。

「え!? どうしたの……急に?」

 驚いた俺から距離ができたのが気に食わないのか、ヒナは追いかけるように一歩踏み出し、さらに俺の腕にぎゅっと抱きついてきた。その行動に、俺の心臓は大きく跳ねる。ドクン、ドクンと、まるで警鐘を鳴らすかのように激しく脈打った。

「逃げちゃいやぁっ」

 腕に絡みつくヒナの体温と胸の柔らかな感触が、シャツ越しに伝わってくる。風呂上がりでブラジャーを付けていないのか、胸の柔らかさに紛れてぷっくりとした違う感触がした。これは……たぶん乳首というやつだろうか? チラッと見ると、薄いTシャツの生地越しに、小さく膨らんでいるのが見えた。その光景に、俺の呼吸は一瞬止まった。甘いような、それでいて熱いような空気が、俺たちの間に満ちていく。

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